入院に至った経緯と医師の診断内容
発症から受診に至るまでの経緯
IKKOさんはある朝、鏡を見た際に顔の片側が動きにくくなっていることに気づき、食べ物を噛む際やまばたきがうまくできないと感じて即座に受診されました。最初は軽い違和感やしびれといった自覚症状から始まり、数時間から数日のうちに表情筋の左右差が明らかになったため、周囲の勧めもあって専門の医療機関での精査を受けることになりました。受診の際には発症時刻や進行の速さ、既往歴(最近の上気道感染や耳の症状の有無など)について詳しく聞き取りが行われました。
入院は、症状の急激な悪化や眼瞼閉鎖不全による角膜障害のリスク、そして迅速な治療開始が望ましいと判断されたため決定されました。自宅での安静だけでは対処しきれないと医師が判断し、点滴治療や詳しい検査を行うために入院という選択が取られた経緯があります。
医師の診察と行われた検査
初診では神経学的診察により顔面の運動機能、感覚、反射の有無などが確認されました。顔面の表情筋の左右差、額のしわ寄せや口角の動き、まぶたの閉じ方に関する詳細な評価が行われ、眼の保護の必要性もチェックされました。
併せて行われた検査としては、脳梗塞など中枢神経の疾患を除外するための頭部MRIやCT検査、感染や炎症の有無を調べるための血液検査、そして顔面神経の機能を評価するための電気生理検査(神経伝導検査や筋電図)が挙げられます。これらの検査結果を総合して、迅速かつ適切な治療方針が検討されました。
診断名と初期治療方針
医師の総合判断のもと、IKKOさんには末梢性顔面神経麻痺、いわゆるベル麻痺(または類似する末梢性顔面麻痺)と診断されました。診断では、発症の突然性と検査で中枢病変が否定された点、顔面神経に一致した運動障害が認められた点が重視されました。
治療方針としては、炎症を抑え神経の回復を促すためのステロイド療法(内服または点滴)を中心に、場合によっては抗ウイルス薬の併用が検討されました。加えて、角膜保護のための点眼や眼帯の使用、顔面筋の拘縮や萎縮を防ぐための理学療法(顔面リハビリ)やマッサージの導入、必要に応じた疼痛管理など、複合的なサポートが行われる方針が示されました。医師は経過観察を続けながら、回復の兆候や合併症の有無に応じて治療計画を調整する旨を説明しました。
入院中の治療とリハビリ経過
急性期の薬物治療と検査経過
入院直後はまず状態の把握と並行して急性期の治療が行われました。血液検査や頭部画像検査で他疾患の除外を行い、神経内科・耳鼻咽喉科の連携で診断方針を確認したうえで、炎症や神経浮腫を抑える目的でステロイド療法を開始しました。必要に応じて抗ウイルス薬や神経保護を目的とした補助的な薬剤が投与され、痛みや不快感に対しては鎮痛処方が行われました。
目の乾燥や角膜障害を防ぐため、人工涙液の定期点眼、就寝時の眼帯や軟膏の使用などの眼睛ケアが徹底され、眼科とも連携して角膜状態の観察が継続されました。
顔面リハビリの進め方と具体的なメニュー
薬物治療と並行して顔面リハビリを早期から開始しました。初期は筋肉の拘縮を防ぐための軽いマッサージや受動的な可動域運動を中心に行い、その後、能動的な表情筋トレーニング、鏡を見ながらのミラー練習、呼吸と連動させた発語訓練などへステップアップしました。
理学療法士・作業療法士による個別セッションは原則毎日実施され、電気刺激療法や表情筋の筋電図(EMG)バイオフィードバックを用いたニューロリハビリテーションを取り入れることで、正しい筋収縮パターンの獲得を目指しました。言語聴覚士による嚥下・構音の評価・訓練も必要に応じて実施し、食事形態やコミュニケーション方法の工夫を指導しました。さらに、入院中に自宅でできるセルフエクササイズや眼の保護法も指導され、退院後の継続リハビリに備えました。
経過の変化と発生した課題への対応
入院後1〜2週間で口角の動きや笑顔の左右差に改善傾向が見られ、患者本人も動きの回復を実感できるようになりました。しかし、まぶたの閉鎖不全や眼裂の不対称、回復過程での共同運動(シンキネジア)が出始めたため、リハビリ方針の微調整が行われました。具体的には、過剰な共同収縮を抑えるためにより細かい筋再教育を強化し、必要に応じてボツリヌス毒素療法等の検討を行う旨が説明されました(実施は状態の安定後に外来で判断)。
精神面の不安やストレスに対しては心理サポートや生活指導も行われ、日常生活動作(食事、入浴、化粧など)の工夫を通してQOL維持に努めました。退院時には現在までの反応性や残存症状、今後の外来リハビリ計画とセルフケアのポイントが整理され、継続的な経過観察とリハビリ継続の重要性が共有されました。
退院の報告と回復状況、今後の見通し
退院時の状態と日常生活への復帰状況
退院時点では、顔面の麻痺は完全に消失していないものの、入院当初に比べて明らかな改善が見られます。閉眼や口の動かしにくさ、表情の左右差といった症状は残存していますが、日常生活での食事や会話に支障が出るレベルではなく、自宅でのセルフケアや軽度の外出が可能な状態です。疲労や緊張が強いと一時的に症状が目立つことがあるため、無理をせず休息を取ることが勧められています。
継続している治療とリハビリの内容
退院後も外来での経過観察とリハビリテーションは継続します。具体的には、理学療法士・作業療法士による顔面筋のマッサージやストレッチ、表情筋を鍛えるための自主トレーニング、必要に応じて言語聴覚士による発声や嚥下の指導が行われます。電気刺激療法や鏡を使ったフィードバック訓練などを併用することもあります。通院頻度やリハビリの強度は回復の状況に合わせて調整されます。
今後の見通しと経過観察のポイント
一般的に、顔面神経麻痺は数週間から数か月で改善するケースが多く、3〜6か月で大きな回復が期待されます。ただし重症例や神経の損傷が大きい場合は、回復に6か月以上かかることや一部に後遺症(シンクネジー=不随意な筋収縮など)が残る可能性もあります。今後は定期的な外来受診で顔面運動の回復度合いや機能検査(必要ならば筋電図など)を確認し、改善が停滞する場合は治療方針の見直しや追加のリハビリを検討します。主治医との連携を保ちながら、段階的に仕事復帰や活動量の拡大を進めていく見通しです。


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